「ミステリー」と「サスペンス」の違いは犯人の扱いが焦点になるという事

テレビや映画(邦画・洋画)で見かける「ミステリー」と「サスペンス」、どちらもドキドキの展開が多くラストはどういう結末になるのか、楽しみなジャンルです。2時間ドラマや映画の宣伝文句で見かける文言ですが、似ているようで異なるこの2つ、どこが違うのでしょうか。

ポイントは犯人が分かっているか隠されているか

小説・ドラマ・漫画等で人気のある定番のジャンルであるのがいわゆる「推理モノ」です。それを英語で言っているような言葉が2つ存在することはほとんどの人がご存知でしょう。それは「ミステリー」と「サスペンス」です。この2つの言葉、実な明確な違いが存在しています。それは「追いつめられる側(つまり犯人)」の、名前や顔が読者の視聴者に対して「最初から明示されているか否か」ということです。

最後の最後で犯人が分かる時と、最初に犯人が分かりどうやって警察や探偵が追いつめていくか、その違いです。

ミステリ-とは?

ミステリー(mystery)は、元々は「神秘」や「不思議」と言った意味合いでしたが、現在はほぼ「謎解き」の意味で使われ、謎解きを中心とした作品に対し呼称します。「古代の秘宝の謎を暴く」ような物も含まれ、「アドベンチャー」要素も加味されることもあります。「超能力系」も、その秘密を暴くものではないのなら「ファンタジー」に分類されます。語源はギリシャ語の「ミューステリオン」で、人智では計り知れない神の隠された秘密などの意味を持ちます。

恐怖よりも、謎や秘密の解明に重きを持ちます。ですので別に怖い話である必要も無く、「親の残した遺言」の謎を探る感動作でも、「ダヴィンチコード」のような作品でも良いわけです。そして謎の解析・探求はしても必ず解決するとも限らない部分もあります。

具体的に言うとギリシャ語で「謎」を語源に持つ「ミステリー」ですが、探偵役がどこにいるのか見えない犯人を明かしていく、という謎解きが主題です。推理モノと聞いて、真っ先に思い浮かぶものがこのミステリーです。つまり、最後に犯人が分かるのがミステリーです。

サスペンスとは?

サスペンス(suspense)の意味は、「創作物中の危機が見ている者に感じさせる不安」を指し、ドキドキハラハラするような作品に用いられることが多いです。特に「謎解き」が無いホラー作品などで使用されることもあります。あくまで「危機が迫る中の不安や懸念」ですので、スポーツやギャンブルの「スリル」とは別の物です。語源はサスペンド(引き伸ばす)という動詞の派生語や、ズボンを吊るす「サスペンダー」などから来ているとされ、「見ている物を吊り上げる(宙づりにする)」という意味からともされます。

「迫りくる恐怖」に主眼が置かれ、謎の解明などはしない傾向にあります。他にもパニック物も含まれ、主人公と共に恐怖を共有するような作品化は多いです。

具体的に言うと追いつめられる人間の主観的スリルを軸とした主題となっています。名のある名探偵○○のシリーズの場合は、必ず「探偵VS犯人」のダブル主人公対決となります。つまり、最初から犯人が分かっているのがサスペンスです。

犯人がいない謎が中心の物語もある

サスペンスは「ドキドキ」を楽しみ、ミステリーは「推理」を楽しむという違いがあります。殺人が起きても「スリラー」や「ホラー」では謎を解かないのでミステリーにはなりませんし、そもそも人の死なない謎を追うだけの物も存在します。

サスペンスは客観性を持っていて、「物語を見ている」部分があり、より「主観的」になると「スリラー」になります。また、謎解きをしていても、主人公のそれを見て楽しむならサスペンスのカテゴリーになります。

もちろん例外も存在します

確かに一部では例外も存在します。主人公が姿の無い追跡者や脅迫者に怯える物語という、探偵のいないサスペンスも成立します。最初の場面で「犯人だ」と提示された人物が、実は真犯人じゃなかった、となる「サスペンス」と見せかけてからの「ミステリー」のようなパターンも成立します。

サスペンスの巨匠といえば、ジョルジュ・アンリ・クルーゾーや、ヒッチコック監督の犯人との駆け引きが有名です。日本ではお馴染みの「古畑任三郎シリーズ」や「コロンボ」もサスペンスです。「コナン」や「金田一少年」は基本的にミステリーになります。ミステリー女王と呼ばれ、アガサ・クリスティのオリエント急行シリーズも見事な傑作です。

物語のジャンルは、端的に「それ」一つで構成されることはまずありません。どのような要素が含まれているのかを多角的に見る必要があります。探偵物と呼ばれる作品であれば、大抵はサスペンスであり、ミステリーです。「謎の」大量殺人劇でも、ただ逃げ惑うならサスペンス、立ち向かって真相を暴くならミステリーも加わるし、戦うのであればアクションも追加されるのです。